脱・作業代行!税理士の適正対価を守る『価値翻訳』講座③ 顧問料=“経営防衛費”。「金利」と「格付け」で証明するROIロジック

1. 導入:なぜ社長は「顧問料」を高いと言うのか

 ① 「作業コスト」と比べられている悲劇

「先生、今期は赤字だし、顧問料を少し安くできない?」

「クラウド会計なら月額数千円でできるみたいなんだけど……」

毎月、領収書をチェックし、試算表を作成し、税務リスクがないか目を光らせているにもかかわらず、このような値下げ交渉を受ける。

税理士として、これほどプライドが傷つく瞬間はありません。

なぜ、あなたの献身的な業務は「高い」と言われてしまうのでしょうか?

その原因は、サービスの質ではなく、経営者の頭の中にある「比較対象(アンカー)」のズレにあります。

多くの経営者は、無意識のうちに顧問料を以下のものと比較しています。

・事務員の作業人件費

・クラウド会計ソフトの利用料(サブスクリプション)

・携帯電話などの通信費(固定費)

これら「作業コスト」や「消費財」と比較されている限り、たとえ適正な価格設定であっても「高い」と感じられるのは避けられません。

この認識のズレを解消しない限り、あなたの価値を正しく認めてもらうことは難しくなります。

② 比較対象を「消費」から「投資」へ強制変換する

この状況を打破する最も効果的な方法は、こちらから「比較対象を変えさせる(再定義する)」ことです。

顧問料は、何かを消費するための「経費(コスト)」ではありません。

会社のお金を守り、将来の資金調達コストの抑制に寄与するための「投資(インベストメント)」であり、資金繰りの悪化や格付け低下を未然に防ぐための「経営防衛費」です。

本記事では、この抽象的な概念を、経営者が大好きな「カネ(金利・融資)」の話に変換し、「顧問料を払った方が、結果的に会社に現金が残る可能性がある」という事実を、数字で証明するロジック(ROI)を解説します。

精神論や信頼関係だけに頼る時代は終わりました。

これからは「数字」という共通言語で、あなたの価値を証明してください。

2.再定義:あなたは「事務員」ではない。「防衛機能」のシェアである

① 「CFO」と「法務部」をシェアする価格破壊

まず、経営者の脳内にある「税理士=記帳係」という誤解を解くための、強力なアンカリング(比較の基準)を提示しましょう。

もし、値下げを打診されたら、あるいは契約前の面談で、こう問いかけてみてください。

「社長、もし社内に『税務リスクを完璧に防ぐ法務担当』と、『銀行交渉に強い財務部長(CFO)』を設置したら、年間いくらかかるでしょうか?」

採用コストや社会保険料を含めれば、数百万円から、場合によっては1,000万円クラスのコストがかかるでしょう。

そもそも、採用難の今、中小企業がそれだけの人材を確保すること自体が現実的ではありません。

しかし、顧問契約を結べば、その「高度な専門機能」を、一般的に見れば管理部門の人件費よりも高いコストパフォーマンスで利用できます。

これは、1人の専門家を複数の会社で「シェア(共有)」し、必要な時に必要な知見を提供する仕組みだからこそ実現できる価格設定です。

「事務員の代わり」と見れば高いかもしれませんが、「CFOと法務部の機能をシェアしている」と考えれば、極めて合理的な契約であることが伝わります。

まずはこの「役割の再定義」を、言葉にして伝えることから始めてください。

② 「何も起きない」ことの市場価値

次に、「守り」の価値をお金に換算します。

私たちの仕事の成果は「何も起きないこと(平穏)」ですが、経営者はその価値をゼロだと感じがちです。

ここで有効なのが、「事故が起きた時のコスト」を提示することです。

例えば、税務調査で主要な経費が否認された場合、本税に加え、過少申告加算税、延滞税、最悪の場合は重加算税が課されます。

一度の否認で百万円単位のキャッシュアウトが発生することも、実務上決して珍しくありません。

「顧問料は、この将来の損失リスクを未然に防ぐための、ある種のリスクマネジメント費用でもあります。さらに、一般的な保険とは異なり、毎月の試算表を通じた信用維持の機能もついています」

このように伝えることで、顧問料は「削るべきコスト」から、銀行格付けや信用維持のために「削ってはいけない防衛費」へと昇華されます。

3.実証:「金利」と「格付け」で証明するROI(投資対効果)

① 「信頼」こそが最大の「資金調達力(攻め)」になる

「防衛費」としての概念を伝えたら、次は具体的な数字で投資対効果(ROI)を証明します。

ここで重要になるのが、「税理士による適正な会計処理(法的安心)」が、結果として「銀行評価(金融メリット)」の基盤になるというロジックです。

ご存知の通り、銀行の貸出金利は「ベースレート(市場金利)」に、企業の信用力に応じた「スプレッド(上乗せ金利)」を加えて決定されます。

市場金利が上昇傾向にある今、「ベースレート」の上昇は一企業の努力では避けられません。

しかし、「スプレッド」については、決算書の信頼性を高めることで、不当な悪化を防ぐ余地があります。

「社長、これからは金利が上がる時代です。

銀行格付けは業績で決まりますが、その前提となるのは『決算書の信頼性』です。

もし、ずさんな経理で『粉飾の疑い』や『管理能力不足』とみなされれば、業績に関わらず格付けは下がります。

私たちが毎月適正にチェックを行い、決算書の品質を担保することは、銀行からの信頼を守り、金利上昇(スプレッド拡大)を最小限に留める防波堤になります」

以下の表を見てください。これは一般的な銀行格付けランクと、想定される金利コストの相関イメージです。

※金利差や利息額は一般的な目安であり、金融機関や情勢により異なります。

ご覧の通り、正常先(下位)から要注意先に転落するだけで、金利は約2%跳ね上がり、年間利息は100万円も増加します。

顧問契約の真の価値とは、この「崖からの転落」を防ぎ、適正なポジションを維持することにあるのです。

② 顧問料の「元を取る」試算ロジック

では、具体的にどれくらいの金銭的価値(ROI)があるのか。

あなたの顧問先の借入金額を当てはめて、以下の早見表で確認してみてください。

▼ 金利上昇を「0.2%」抑制できた場合の効果(防衛)

(格付けダウンの回避など)

▼ 金利条件を「0.5%」改善できた場合の効果(攻め)

(書面添付や信頼性向上による優遇など)

※注:この試算は概算です。実際の効果は企業の状況等により異なります。

借入5,000万円の企業であれば、ほんの少し(0.2%)のスプレッド悪化を防ぐだけで、年間10万円(月額8,300円分)の顧問料の元が取れる計算になります。

③ 「10万円」は氷山の一角にすぎない

「えっ、たったの年間10万円? 顧問料の全額は回収できないじゃないか」

数字に強い経営者ほど、そう感じるかもしれません。

しかし、この金利メリットは、社長に最も伝わりやすい「代表例」にすぎません。

顧問契約の価値は、税務リスク回避・格付け維持・融資枠の確保など、複数の効果が“束”になって生まれるものです。

先ほどの「崖」の図を思い出してください。

もし税理士が関与せず、格付けがランクダウンして金利が2%上がったら? 年間100万円の損失です。

もし税務調査で大きな否認を指摘されたら? 数百万円のキャッシュアウトです。

顧問契約とは、この「見えない巨額の損失」を、月々数万円でブロックし続ける「防波堤(保険)」としての機能でもあります。

平常時の「金利メリット(10万円)」に加え、有事の「損害回避(100万円)」まで含めれば、その投資対効果は圧倒的なものになります。

4. 結論:「コスト」から「投資」へ

① 経営者は「理由」があれば払う

経営者が顧問料を値切るのは、単にお金がないからではなく、「払う理由(納得感)」が不足しているからです。

「作業代」として見れば割高に感じても、それが会社を守るための「予防費」であり、銀行からの信頼を繋ぎ止めるための「信用維持費」であると腹落ちすれば、高い・安いの判断基準そのものが劇的に変わります。

重要なのは、私たち自身が**「作業請負人」として扱われる構造を作らないこと**です。

・×:「今月も記帳しておきました」

・○:「今月も税務署や銀行が見た時に問題となる異常値がないか、適法性を確認しました」

この「外部の目線(税務署・金融機関)」を意識した一言の積み重ねが、顧客の認識を少しずつ変えていきます。

② 次回予告:価値を見せる「演出」の技術

さて、いくら口頭で「格付けが大事です」と伝えても、毎月送る資料が「数字が羅列されただけの試算表」では、その効果は半減してしまいます。

そこで次回(Vol.4)は、あなたの見えない判断業務を、目に見える形にする「月次監査報告書」の演出技術について解説します。

ご安心ください。高価なシステムを導入する必要はありません。

皆さんが普段お使いのExcelや作成しているPDF資料(試算表)に、「ある工夫」を加えるだけで十分です。

顧客が「先生、ここまで見てくれていたのか」と実感できる、具体的かつ今日から使える資料作成のノウハウをお渡しします。

数字(ロジック)の次は、証拠(ビジュアル)で、適正対価を盤石なものにしましょう。

5. おわりに

本記事で解説した「ROIロジック」は、単なる値上げの道具ではありません。

税理士法第1条にある「納税義務の適正な実現」という使命を全うし、真正な事実に基づいて作成された決算書で企業の存続を守る。

その価値を正しく認識してもらうための「共通言語」です。

ぜひ、次回の面談から、勇気を持って「守りの価値」を語ってみてください。